地球の鼓動に耳をすませば
-東海大学新聞連載コラムー

(8)西表島の地震活動調査

 馬場 久紀      
 
総合科学技術研究所助教授

 2001年12月18日13時02分,南西諸島南部の与那国島の近海でM7.3(気象庁速報値)の地震が発生しました.この地震は海底下で発生したため,津波の発生が懸念されました.M7.3の地震の規模は1995年兵庫県南部地震よりも一回り大きい地震であるため,万一人が住んでいる場所で発生した場合,甚大な災害を伴う規模の大地震です.この地震発生後,NHKでは通常の放送を中止し,全国ネットで被害や津波に関する情報を2時間に渡って緊急臨時番組に切り替えて放送しました.津波もそれほど大きくなく,この地域でもっとも大きな都市のある石垣島で10cmの津波が観測されるにとどまりました.

 与那国島に近い西表島では,学校法人東海大学沖縄地域研究センターがあります.我々の研究グループは,この沖縄地域研究センターをベースにして,西表島で発生している地震活動の調査を1991年から実施しています.1998年からは石垣島・与那国島・台湾を含む地震観測網へ規模を広げ,日々これらの地域の地震をネットワーク経由で湘南校舎・清水校舎から監視しています.今回発生した与那国島近海の地震については,地震発生直後から震源位置(図1参照)や活動の推移を逐次まとめ,ホームページ等を通じて情報発信しました.

 西表島を含むこの周辺地域では,あまり知られてはいないのですが群発地震やM7を越える大地震が度重なり,地震による津波がしばしば観測されます.津波を伴った地震は1900年以降,今回の地震を含めて7回発生しており,1771年には死者1万人を越える明和大津波が発生しました.

 我々のグループでは,沖縄地域研究センターを最大限活用し,地域に密着した地震活動調査をこの地域の地震発生の原因の究明や地震防災に役立てていきたいと考えています.

 地球情報調査プロジェクトHP:http://www.tric.u-tokai.ac.jp/research2/jindex.htm

東海大学新聞掲載日

2002120  

 禁無断掲載 C 学校法人東海大学新聞編集委員会

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Update: 2002.1.20
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