地球の鼓動に耳をすませば
-東海大学新聞連載コラムー

(7)電波で測る"最北端"の風

五十嵐喜良
独立行政法人 通信総合研究所 
企画部研究連携室 室長

 日本最北端の稚内に、VHF帯の電波を用い、対流圏から下部成層圏高度までの風速を高精度に測定できるレーダが、20006月に通信総合研究所により設置されました。通常、高層の風速の測定には、ゾンデを放球して、測距用レーダでゾンデの方向と距離の変化を測り風速を求めます。このVHFレーダは、波長が6m程度のパルス電波を発射し、大気の屈折率の変化により大気中で散乱してくる電波の強さを地上の3組のアンテナ群で受信し、地表面に投影された電界強度のパターンが風に流されるという仮定を用いて風速を測定しています。1年間の観測結果をみると、11月頃には高度10km付近では、50m/sもの東向きの風が吹いています。3月の頃にも強風の領域が現れます。風の高度分布は、季節で大きな変化があります。毎日の地上の気象とどのような関係があるのか、このレーダで求めた風の観測データを気象モデルに入力したら,天気予報の精度は高まるのかなど興味はつきません。航空機に乗っていて時々体験する突然起こる揺れと関係する大気擾乱の発生メカニズム解明の基礎データとしても使われています。インターネット(http://ionet-us.crl.go.jp/radartest/WK545_highu_vel.html)で、稚内上空の風速の観測結果を試験公開中です。


    稚内のVHFレーダのアンテナ全景
 (この敷地には
東海大学の観測機器も設置されてる)
   

 地球情報調査プロジェクトHP:http://www.tric.u-tokai.ac.jp/research2/jindex.htm

東海大学新聞掲載日

20011220  

 禁無断掲載 C 学校法人東海大学新聞編集委員会

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Update: 2001.12.20
E-mail: kcho@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp