長 幸平
東海大学総合科学技術研究所助教授
地球情報調査室長
2回に渡り、紫外線の季節変動や地域差の話を取り上げて来ました。今回は、地球規模の変動について取り上げます。紫外線は人体に有害ですが、幸い成層圏のオゾン層が太陽放射に含まれる紫外線の多くを吸収し、紫外線から地球上の生物を守るベールの役目を果たしています。ところが、1970年代、このベールのほころびが明らかになりました。人間がエアコンの冷媒や精密機械の洗浄剤用に生産してきたフロン等によるオゾン層の破壊です。
1978年に打ち上げられた衛星に搭載されたTOMSというセンサの観測により南極上空に円形状にオゾン濃度の低い場所があることが確認されました。これがオゾンホールです。右下に年間でオゾンホールが最大となる10月のTOMSの画像例を示します。TOMSが捉えたオゾンホールの画像は、万人にオゾン層破壊の深刻さを認識させ、その後の国際的な取り組みを加速させるきっかけとなりました。1995年にフロン等の主要なオゾン層破壊物の生産は全廃されましたが、すでに排出されたフロン等は現在も地球の回りを浮遊しており、オゾン層を破壊し続けています。左下の図はTOMSの観測データから得られたオゾンホール面積の経年変化グラフです。オゾンホールが徐々に拡大していることがわかります。地球に漏れ込む紫外線の量は確実に増えていることになります。
こうした傾向は、日本や湘南キャンパスに降り注ぐ紫外線の量にどのような影響を及ぼしているのか、私たちはしっかり観測を続けていきたいと思っています。
TOMSが捉えたオゾンホール オゾンホールの面積の経年変動
(2000年10月) (データ提供:NASA)
http://www.tric.u-tokai.ac.jp/research2/jindex.htm
*スペースの関係で東海大学新聞に掲載された記事では原稿の一部が割愛になりました。
ここには原文を掲載します。
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Update: 2001.11.19
E-mail: kcho@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp