地球の鼓動に耳をすませば
-東海大学新聞連載コラムー


(4)チベット高原の環境

岩下 篤
九州東海大学
工学部宇宙地球情報工学科助教授

 私は今春、東海大学・チベット大学友好学術登山隊の一員として、中国南西部に広がるチベット高原に遠征し、現地で約3週間、学術調査に携わりました。そこには悠久の大平原に眠る未知の湖「普莫錯」が紺碧の水をたたえながら横たわっていました。5,000mの高所における湖の本格的調査は、世界初であると言われています。私は、ここで最新鋭物理探査装置による湖底直下構造断解析や湖岸の岩石中の石英脈断裂方向測定等を実施しました。この観測については、また時を改めて紹介します。
 現地に約3週間滞在して実感したことは、日本に比べ極端に空気が薄く、一日の時間の流れの中で日射が強く、雲が低く早く流れ、天候・気温の変化が激しく、環境が目まぐるしく変化するということです。この厳しい環境をデータで示しましょう。今回、総合科学技術研究所の佐々木政子先生との共同研究で紫外線の観測を行いました。左下のグラフはその結果です。■がチベット高原、●が神奈川県平塚市の東海大学湘南校舎で観測した紫外線UV-Bの値です。同じ太陽高度でも標高5,000mチベット高原では紫外線の放射が湘南校舎の約2倍であることが分かります右上の写真が現地入りした直後の私、右下の写真が3週間後の私です。紫外線の力を「人体実験」で証明しました。さらに、厳しい自然環境の中での生活で体重が7kgも減り、高地での学術調査の厳しさを改めて実感させられました。

現地入り直後
3週間後

 http://www.tric.u-tokai.ac.jp/research2/jindex.htm

東海大学新聞掲載日

20010920

 

 禁無断掲載 C 学校法人東海大学新聞編集委員会

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Update: 2001.9.25      E-mail: kcho@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp