地球の鼓動に耳をすませば
-東海大学新聞連載コラムー

(34)宇宙旅行には放射線対策をお忘れなく

利根川 豊 
東海大学工学部
航空宇宙学科教授

 1957年10月4日に人類初の人工衛星スプートニクが旧ソ連によって打ち上げられてほぼ半世紀を経た今、宇宙はまさに実用化の時代に入っています。この間に多くの科学衛星が打ち上げられ、地球周辺や太陽系の観測が行われ、宇宙進出への足がかりを作ってきました。人工衛星観測のさきがけとなったのは、スプートニクに遅れること数ヶ月、1958年1月末に打ち上げられたアメリカの人工衛星エクスプローラ1号です。この衛星には宇宙線計測用機器が搭載され、地球の周りに予想をはるかに超える強力な放射線が存在するという、画期的発見に結びつきました。
 発見者にちなんでヴァン・アレン帯と名づけられたこの放射線帯は、エネルギーの非常に強い陽子や電子などの粒子、即ち放射線が満ちていて、人工衛星の機器にとっても人体にとっても大変危険な場所です。図のように地球を取り巻く二重のドーナツ構造をしています。これは、高エネルギー粒子が地球磁場に捕らえられ、地球の周りを勢いよく旋回しているためです。幸い放射線帯は地上約600lm以上なので、高度300km付近のスペースシャトルや国際宇宙ステーションでは通常はあまり影響ありません。しかし、将来月や惑星へ旅行する時にはどうしても放射線帯を突っ切って行かねばなりませんし、放射線帯外側近くの静止軌道上に人が長期滞在するには十分な注意が必要です。また、以前紹介したような大磁気嵐時には放射線が大変強まりますので、船外活動はお控えください。

地球を二重に囲む放射線帯、破線は地球の磁力線 
イラストStephan Francis

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東海大学新聞掲載日 20045月20
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Update: 2004.6.1  E-mail: kcho@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp