地球の鼓動に耳をすませば
-東海大学新聞連載コラムー

(32)流氷の使者クリオネ

浜岡荘司 
紋別市流氷都市推進室参事

 流氷とクリオネはオホーツク海沿岸地域の冬季観光の目玉となっています。クリオネは流氷の天使あるいは妖精と呼ばれますが、巻貝の仲間で、腹足の一部が翼足に変化して浮遊生活に適応した動物プランクトンです。ここではクリオネの生態の一部を紹介します。
 クリオネは幼年期初期には植物プランクトンをろ過捕食しますが、成長すると同じ巻貝類で殻を持つリマキナだけを捕食する肉食性に変化します。一見かわいいクリオネですが、捕食方法はどう猛で、頭部が開いて普段体内に収まっている3対6本の触手のような口円錐を用いて餌を捉え、透明で薄い殻を壊すことなく1対のフックでリマキナの軟体部のみを食べます。餌を探知するのはアンテナと口円錐で、嗅覚で反応します。肉食性のクリオネは飢餓条件に強く、餌を与えないで冷蔵庫内
(水温4〜5℃)で1年以上生存する逞しい生命力を持っています。
 クリオネは北極・南極周辺の冷水域に分布する外洋性寒海種で、普通沿岸域では見られませんが、オホーツク海では冬季、流氷接岸時期に波打ち際までやってきます。今年は紋別周辺でも沢山見られました。水深0〜600mに分布し、表層(200m以浅)に分布の中心を持っています。クリオネの生態から見ると、流氷の天使、妖精と呼ぶよりも流氷の使者と表現するほうが適切といえます。 

クリオネ 口円錐を出したクリオネ

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東海大学新聞掲載日 20042月20
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Update: 2004.2.24  E-mail: kcho@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp