地球の鼓動に耳をすませば
-東海大学新聞連載コラムー

(31)九州の活断層:布田川・日奈久断層

岩 下  篤
九州東海大学工学部
宇宙地球情報工学科教授

熊本空港から市内に向かうバスの車内から左手につながる山地が見えます。この山地に沿って南北に走っているのが「布田川・日奈久断層」です。その名前は、阿蘇山南西部に流れる布田川地域から日奈久地域まで約100kmの長さで連なっていることに由来しています。この断層を人工衛星の画像から見ると、写真のように直線状に現れているのが分かります。断層は、日奈久からさらに南下し、田浦町から八代海に没します。海底でも音波探査によってその存在が確認されています。この断層の活動度は、活断層研究会によればBランクに位置づけられており、過去約100年間にマグニチュード6.0以上の地震が4回発生しています。
 九州東海大学工学部宇宙地球情報工学科では、この断層の研究を行っています。断層の北東部の御船町土山地区には、断層活動の結果生じたと考えられる地溝帯があります。ここで行った人工地震探査によって、地溝帯の浅部構造が分かりました。また、分解能の異なる人工衛星画像から判読した地形の特徴を表すリニアメント解析によって、画像の持つ解像度の違いが地形判読に与える影響を明らかにしました。衛星画像と物理探査という2つの観測方法により、地表及び地下の構造を明らかにすることができます。
 昨年
12月には、東京大学地震研究所が実施した大規模地殻構造調査に、東海大学総合研究機構と共に、約12kmの測線での人工地震探査実験に参加し観測を行いました。この調査により布田川・日奈久断層の地下およそ30kmまでの地殻構造を明らかにすることができます。私たちは、この観測で得られたデータの解析を行って行く予定です。

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東海大学新聞掲載日 2004220
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Update: 2004.2.24  E-mail: kcho@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp