地球の鼓動に耳をすませば
-東海大学新聞連載コラムー

(30)地球温暖化における雪氷の役割

長 幸平
東海大学第二工学部
情報システム学科教授
 

今回は、地球温暖化における雪氷の役割について考えてみたいと思います。地球温暖化と雪氷の関係というと、「南極の氷が融けて海面上昇が起きたら大変だ。」というような話題に行きがちですが、実は、雪氷には温暖化の「抑止力」としての役割があります。
 地球は太陽からの放射エネルギーの約7割を吸収して3割を大気圏外に反射しています。つまり、地球の反射率(これをアルベドといいます。)は30%ということになります。残りの70%の太陽放射エネルギーは地中および大気や雲に吸収されています。ところで、地球の約7割を占める海の反射率はおおむね10%以下、農地や森林などの陸域の反射率も30%以下です。にもかかわらず、地球全体の反射率を30%まで引き上げているのが雪氷や雲の存在なのです。雪氷は状態にもよりますが、30%から90%の高い反射率を持っており、地球全体の反射率を高める役割を果たしています。
 ところが、一旦、温暖化が進み、雪氷域が融解していくと、地球の反射率が低下し、地球表面における太陽放射エネルギーの吸収が増加し、さらに温暖化を加速させることになります。この現象を雪氷アルベドフィードバック(ice albedo feedback)といいます。こうしたメカニズムがあるからこそ、私たちは地球の雪氷の分布状況の変化を慎重に見守っていく必要があるのです。

 雪氷アルベドフィードバック

 

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東海大学新聞掲載日 2004120
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Update: 2004.1.24  E-mail: kcho@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp