地球の鼓動に耳をすませば
-東海大学新聞連載コラムー

(29)地球温暖化と長期観測の重要性

長 幸平
東海大学第二工学部
情報システム学科教授
 

地球温暖化が懸念されています。その主な原因として指摘されているのが、大気中の二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの増加です。
 下図は、米国スクリプス海洋研究所のチャールズ・キーリング博士がハワイのマウナロア火山で1957年から観測してきた大気中のCO2濃度の経年変化グラフです。このグラフから、CO2濃度の年サイクルの周期的な変動と長期的な上昇傾向が読み取れます。年サイクルの変動は、CO2を吸収する植物の成長過程などにより、地球のCO2の吸収量が年サイクルで増減している(言わば地球が呼吸している)様子を示しています。しかし、地球が吸収できるCO2の量には限度があり、人間活動が排出するCO2の増加に伴い、大気中のCO2濃度は長期的な上昇傾向を示して来たわけです。
 博士のこの観測によって、初めて大気中のCO2濃度の増加傾向が明らかになったのです。しかし、観測開始当初はCO2観測の重要性を認識する人は少なく、博士は継続的な予算の確保に相当苦労したようです。にもかかわらず、精度の高いCO2観測を40年以上続けてきた博士の功績は今では世界中から高く評価されています。このグラフは、長期観測の重要性と、厳しい予算状況の中でも信念を持って地道な研究を続ける研究者の情熱の大切さを示唆しているように思います。

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東海大学新聞掲載日 20031220
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Update: 2003.12.24  E-mail: kcho@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp