地球の鼓動に耳をすませば
-東海大学新聞連載コラムー

(26)今度こそ、南北オーロラ生中継

利根川 豊 
東海大学工学部
航空宇宙学科教授

 本号の刊行日である9月20日は、南極昭和基地と北極側スウェーデンからの世界初南北オーロラ同時生中継が予定されています。実はこの企画、去る4月5日に実施放映される予定で、そのことを3月20日号で紹介したのですが、イラク問題の勃発などもありその時は中止になってしまいました。本コラムを読んで楽しみにされていた皆様には申し訳ございませんでした。今度こそよほどのことがない限りオーロラの生中継が実施されると思いますので、前回の記事と重複しますが、北極・南極に現れるオーロラ現象について簡単に説明します。
 オーロラは、虹とは全く異なり夜の街を飾るネオンサインと同じ原理で自ら光ります。つまり、希薄なガスに高電圧をかけて放電させたときの発光現象です。ガラス管の中のネオンガスが発光すればネオンサイン、高度100km以上の希薄な地球大気(酸素や窒素)が放電して光っているのがオーロラです。
 宇宙のネオンサインであるオーロラを光らす電源は太陽風発電です。これは、地球の磁場と太陽から高速で飛んでくる電気を帯びた粒子(太陽風)の相互作用による巨大な発電です。その電力で宇宙空間の電子や陽子が加速され、地球の磁力線に沿って北極、南極地方に降注ぎ、超高層大気を発光させてオーロラとなります。
 このようにしてオーロラは北極にも南極にも現れますが、それを南北両半球で同時に観測できるのは年に2回、両極地方が同時に暗夜となれる春分と秋分の期間に限られます。
 日本の昭和基地はオーロラ帯の中心に位置していて、各国の南極基地の中でも、最もオーロラ出現率の高い場所にあります。更に昭和基地は北半球のアイスランドと一本の磁力線で結ばれていて(磁気共役点)、南北で同時オーロラ観測をするには他に類を見ない好都合の基地なのです。日本の研究者は北極側観測点としてアイスランドに観測機を設置していますが、アイスランドは海洋性気候で晴天率があまりよくありません。ワンチャンスにかける今回のオーロラ生中継は、天候のリスクを避けるためスウェーデン内陸部と昭和基地でオーロラ出現を待ち構える作戦のようです。
 さて、好天と素敵なオーロラ姫登場の幸運に恵まれ、華麗なる地球の鼓動が鑑賞できますように祈りつつ、私も中継を楽しみに待つことにします。

 

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東海大学新聞掲載日 2003920
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Update: 2003.9.20  E-mail: kcho@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp