地球の鼓動に耳をすませば
-東海大学新聞連載コラムー

(23)ヒマラヤ山脈と梅雨

坂田 俊文
東海大学 教授
(財)地球科学技術総合推進機機構 理事長

 衛星画像を見ながらヒマラヤ山脈と梅雨の関係について考えてみよう。今から約6500万年前、南極大陸と一緒だったインド亜大陸が北上し始めた。現在のインド亜大陸の形は大きな三角形の西洋凧のようだ。この大陸は長い時を経てユーラシア大陸の南東縁に衝突した。その結果、インド亜大陸はユーラシア大陸にゆっくりともぐり込み大陸の縁を持ち上げるようになった。長い時を経てのこの造山運動によってインド北部カシミール地方にみられる地溝帯となり、ユーラシア大陸側は上昇し始め、いまのような円弧状のヒマラヤ山脈が出来上がった。

一方、赤道近くのインド洋から蒸発する水蒸気は雲となって北上するが、東西に拡がったヒマラヤ山脈の巨大な壁に阻まれ北上できず、山脈に沿って西から東に向かって雲が移動する。その結果、水をたっぷり含んだ雨雲になって、中国の南部から東南アジア地域に多量の水を供給する。これが、アジアモンスーンで豊かな農業地帯を作り上げている。このモンスーンが東北方向に移動し、延長上にある日本列島に沿って停滞する。6月頃の梅雨前線はこのモンスーンが移動したものであり、日本列島に水の恵みをもたらすのである。

 

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東海大学新聞掲載日 2003520
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Update: 2003.8.25  E-mail: kcho@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp