地球の鼓動に耳をすませば
-東海大学新聞連載コラムー

(21)南極・北極同時オーロラ観測

利根川 豊
東海大学工学部航空宇宙学科教授

今年の2月1日は日本でテレビ放送が始まって50周年ということで、南極昭和基地にハイビジョン放送センターが開設され、越冬交代式などの生中継が行われました。ご覧になった方も多いと思いますが、ちょうど10年前に越冬隊員であった私は、基地の様子など格別に懐かしく見させてもらいました。
 今回、南極中継のハイライトとして、4月5日に南極と北極からのオーロラ同時生中継が予定されています。オーロラは北極にも南極にも現れますが、それを南北両半球で同時に観測できるのは年に2回、春分と秋分の期間に限られます。何故でしょう?極地方では夏は白夜、冬は昼でも太陽の出ない暗夜となります。もちろんオーロラの光学的観測は白夜では出来ませんので、夏と冬が逆に訪れる南北両極域での同時観測は通常難しいのです。両極域が同時に夜になる春分秋分の時期は、オーロラ観測にとって貴重な時期といえます。
 幸い日本の昭和基地はオーロラ帯の中心に位置していて、各国の南極基地の中でも、最もオーロラ出現率の高い場所にあります。オーロラを光らすオーロラ粒子(主に高速の電子)は、地球の磁力線に沿って宇宙から降り注いできますが、昭和基地は北半球のアイスランドと一本の磁力線で結ばれていて(磁気共役点)、南北で同時オーロラ観測をするには他に類を見ない好都合の基地なのです。

 極地方にオーロラが現れるのは、そこを通る磁力線が広く宇宙空間に開いているからで、オーロラ以外にも様々な現象が観測でき、地球周辺の宇宙環境をモニターする大切な地球の窓ということができます。
 しかし、オーロラ観測にとって大切なその窓がいとも簡単に閉められてしまう事が多いのです。オーロラは地上100km以上に現れますので、曇ってしまったら諦めるしかありません。4月5日は昭和基地と北極側の撮影場所(スウェーデン)が同時に晴れることを祈りつつ、皆さんも南極・北極同時オーロラ中継(NHK総合、BS) を楽しみにお待ちください



     昭和基地上空のオーロラ 1993年著者撮影

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東海大学新聞掲載日 200320
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Update: 2003.5.6  E-mail: kcho@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp