地球の鼓動に耳をすませば
-東海大学新聞連載コラムー

(15)地磁気が伝える宇宙の鼓動

利根川 豊
東海大学工学部航空宇宙学科
教授

 今回はこのシリーズの題名そのものの観測を紹介します。すなわち、地球のそして宇宙の鼓動を地磁気の微少変動としてとらえて、地球周辺の宇宙環境や、地球内部を探る研究です。
 ご存知のように、地球は大きな磁石になっています。地上の一点からコンパスの指す向きをたどっていくと、南極と北極を結ぶ一本の線が描けます。最初の点を少しずらすと、また新たな線が描けます。これらの線を磁力線と呼びます。その様子は、棒磁石の周りに砂鉄をまいたときの模様と同じです。
 地球の磁力線を日本付近から上空へたどっていくと、地球半径の数倍上空の宇宙空間を通り、オーストラリア付近の南半球に到達します。それらの磁力線は、様々な原因で微妙に振動しています。ちょうどギターやハープの弦の振動と同様で、磁力線(弦)の長さや張力によって、振動の周波数(音程)が決まります。
 地球磁力線の固有の振動周期は数十秒から、数百秒です。地上で観測される振動の大きさは大変小さく、超高感度の磁力計で、ようやくとらえられる程度ですが、宇宙空間では数百から数千`bの規模で磁力線が振
動しています。その現象は地磁気脈動と呼ばれています。
 この地磁気脈動を解析することにより、地上から地球周辺の宇宙空間や太陽活動
の状態を知ることが出来ます。さらに磁力線は地球内部にもぐりこんでいますから、地下の情報も伝えてきます。最近では、磁気脈動を地震予知に利用する研究も進められています。地磁気の振動はまさに地球と宇宙の鼓動であり、自然が奏でる宇宙の音楽なのです。
 東海大学地球情報調査プロジェクトでは、稚内、熊本、西表島に超高感度磁力計を設置し、自然の奏でる音楽を科学的に鑑賞しています。その結果などは次の機会にご紹介したいと思います。

 

 

 

 

 


 地球情報調査プロジェクトHP:http://www.tric.u-tokai.ac.jp/research2/jindex.htm

東海大学新聞掲載日

2002年920  

 禁無断掲載 C 学校法人東海大学新聞編集委員会

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Update: 2002.9.20  E-mail: kcho@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp