地球の鼓動に耳をすませば
-東海大学新聞連載コラムー

(10)ルソン,ラマンそして西表のロマン

鶴岡靖彦
東海大学理学部物理学科教授
東海大学沖縄地域研究センター次長

 地球情報調査室の観測活動は、西表島の沖縄地域研究センターでも行われております.私は同センターの次長として西表島を度々訪れますが、そこで強く感じることは自然と人々との関わりのなかにこそ、科学の原点はあるということです.
 西表島では、太陽を感じます.海が大変美しく見えます.一年中花が咲いています.島々の緑が目にしみます.自然を感じるのです.  人々と話をします.みなさんがこの自然の中で生活をしています.都会にはない感性があります.人々の感情が強く私の心に響くのです.
 中世の思想家、ルソーは、「広い草原に子供を連れていき、夜空がしだいに明るさを増し、やがて太陽が地平線から現れ、その後、しだいに空を赤く染めながら朝とは反対方向の地平線に沈んでいく、この状況を体験させることによって、その子供は、自ら自然の壮大さを知り、自分なりに疑問をもったり、新たな発見をしたりするはずである」と述べています.
 また、インドの物理学者C.V.ラマンは、ヨーロッパへの航海の途中、地中海の素晴らしい青い海をみて感動しました.そして、この感動が、後にラマン散乱と言われる現象の発見につながったのです.1930年アジア人として初めてのノーベル物理学賞は、このラマンに与えられました.
 科学することは、人間の自然な営みであります.技術の裏に隠れて、自然が見えない自然科学になってしまったいま、この西表島は、東海大学の教育や研究にとって極めて大切な場所だと考えています.

 
沖縄地域研究センターの研究棟と 太陽放射観測機器

 地球情報調査プロジェクトHP:http://www.tric.u-tokai.ac.jp/research2/jindex.htm

東海大学新聞掲載日

2002120  

 禁無断掲載 C 学校法人東海大学新聞編集委員会

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Update: 2002.1.20
E-mail: kcho@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp