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出雲プロジェクト-斜め空中写真を用いた洪水時の河川水流出状況の調査-
ここでは、大雨によって増水した河川の水が海域にどのように流出するかについて、低高度で飛行する航空機から手持ちカメラによって撮影した写真を使って調査した大変ユニークな画像情報解析例を紹介します。
この調査を私たちは「出雲プロジェクト」と呼んでいます。調査の対象となった河川は島根県の大社湾へと注ぐ神戸川で、1977年から1979年にかけて、平常時と洪水時の2時期の調査が行われました。1977年に実施された平常時の調査では、航測カメラを用いた高精度な空中写真による調査と水質調査が行われ、増水時と比較のための基礎データの収集が行われました。一方、増水時の調査には、次のような問題点がありました。
①河川の増水は通常大雨後に発生することから、調査は台風などの河川増水確率が高い時期に限定され、その間常時待機が必要である。
②台風の後は悪天候で通常の空中写真撮影が実施できない可能性がある。

2年間の待機の末、1979年7月、台風の影響による集中豪雨で雨量が調査条件に達し、神戸川が増水したことから、洪水時の調査が実施されました。当初心配していたとおり、調査当日は悪天候で雲高も極めて低く、航測カメラによる鉛直方向の空中写真撮影が不可能となってしまいました。そこで私たちは、高度100-500mの低高度からの手持ちカメラによる斜め空中写真の撮影を実施し、同時に大社湾内および増水した神戸川などの15地点で水質測定を行い、それらの収集データを画像解析しました。画像解析では、まず撮影された写真の中から大社湾内の河水流出状況を捉えるために必要な6枚の写真を選定し、コンピュータ入力(A/D変換)を行いました。そして湾全域をカバーする正射画像を作成するため、それぞれの写真を幾何学的に補正した後、ディジタルモザイク(つなぎ合わせ)することで、神戸川から湾への濁水流出パターン図を完成させました。この画像によって、台風で増水し、濁った神戸川の河水が大社湾内に排出され拡散していく様子がよくわかります。さらにこのモザイク画像を現地で採取した水質データとあわせて重回帰分析することで、大社湾内における神戸川の濁水流出(濁度)バターンが明確に抽出されました。
本例は、かつて実施されたユニークな調査の一例を示したに過ぎませんが、これによって開発された画像処理手法は、今もなお使われているリモートセンシングの基本技術のひとつと言えるでしょう。